提唱後の反響
北海道弁連の動き
被疑者国選が実現された場合に最も困難を来すと思われるのが北海道の旭川、釧路地区であった。とりわけ釧路地区は四国四県を上回る面積を有しながら弁護士数はわずか20数名にすぎない。隣接の支部に出向くと言っても本州以南で言えば他県の山間部に赴く感覚である。私の日本型公設弁護人事務所構想も、派遣する弁護士の第一号は旭川或いは釧路の空白支部に赴くことを前提に構想されたものである。ところが「日本型公設弁護人事務所」構想が紹介されると、それから日を置かずして札幌弁護士会の渡辺会員から「北海道版公設弁護士事務所構想」が発表された。この構想は、札幌の若手弁護士が4人でチームを組んで3ヶ月ずつ交替で道内の空白地粋に赴任するというもので、北海道弁連がイニシアチブを取って行うというものである。派遣される弁護士及びその弁護士の勤務先事務所の負担が比較的軽くすむこと、とりわけ弁護士や事務所が大きな経済的リスクを負わないですむことなどから、現実的で優れた構想だということができる。また、旭川弁護士会では検討の結果、とりあえず自力で運営して行くめどがついたとのことである。
私の提案がきっかけとなったとまでは言わないが、このころから被疑者国選に関する議論の内容が、従来のようにできるかできないかの議論で消極説の理由として過疎地の問題が取り上げられるというのではなく、被疑者国選の実現を前提として、そのために克服すべき課題として過疎の問題が取り上げられるようになったようである。そして、過疎地やこれを取り巻くブロックの弁護士会が具体的な方策を次々に考え出すようになったことに対しては、本当に頭の下がる思いがする。
札幌国選シンポジウム
私公設弁護人事務所の構想については、平成9年10月に札幌で開催された国選弁護シンポジウムで会場意見として発表させてもらう機会を得た。時間の制約もあり、かいつまんで趣旨と設立の見通しを述べただけであったが、そのような事務所であれば積極的に参加したいという発言もあとからなされ、大いに意を強くした。また、学者やジャーナリストの方々からも趣旨に賛同する旨の発言を頂いた。